まず、2次試験ではどんな能力が試されるのかと言いますと、「読解(理解)力」「思考力」「記述力」の3つです。知識の量は、殆ど問題にされていません。
知識を試すのは一次試験で十分ということなのでしょう。
もちろん、まったく知識が要らないかといえば、最低限の基礎は必要です。

 読解力については、過去問を見れば分かるとおり、かなり長い(文字数にすれば3000字近くの)問題文が与えられます。そして、単に知識を問う問題は出ませんから、その問題文から答えを見つけなければなりません。当然ながら、問題文から企業の状況や外部環境、強みや弱みなどを正しく読み取り、理解する必要があります。

次に思考力ですが、2次試験では、単純に何かの定理に当てはめれば解けるような問題は、ほとんど出ません。企業によって状況が違うわけですから、それに応じた最善策というものがあります。
その答えを出すためには、問題文から読み取った情報を元に、論理的に考えていかねばなりません。

 最後に記述力、解答は20字から200字程度の記述式で求められます。たとえ考え方が合っていたとしても、それを採点官に伝わるように書けなければ点数になりません。 模擬試験の採点をしている人に聞くと、半分くらいの人は、何を言いたいか分からない答案だそうです。そんな人が合格するのは不可能ですから、分かる答案が書ける人の中での競争だと思った方が良いでしょう。

 これらの内容をまとめますと、「問題文を正しく理解して、論理的に考えて、分かるように書く」ということができれば合格です。このような能力は、かなり個人差がありますので、最初から身に付いていれば殆ど勉強しなくても合格できる可能性もありますし、逆に相当苦労しなければならない人も出てくると思います。

 しかし、たとえ今は答案用紙が白紙であったとしても、勉強の仕方と問題の解き方を工夫することで合格点を取ることも可能になりますので、簡単には諦めないでください。

 では、2次試験の対策には、具体的に何をやれば良いのでしょうか。それは、ひたすら過去問です。それ以外に無いといっても過言ではありません。

 理由としては、まず第一に、2次試験で何を試されているのか、自分自身で実感するためです。出題者が、どういう能力を求めているのか分からなければ、勉強のしようがありません。

 私は、自分が何回も解いた結果、「読解力」「思考力」「記述力」の3つが試されていると判断しまし
た。しかし、皆さんが「読解力」という言葉を見てイメージするものと、私がイメージしているものは違うかも知れません。ここは、自分の肌で感じていただかなければ分からないところです。

 この3つの中で、自分に欠けていると思うところを、これから補強していかねばならないのですが、その方法もメインは過去問を解くことにあります。

 理由の2番目は、この形式の試験に慣れている人が殆どいないからです。2次試験の問題は、慣れていないと解答用紙を埋めるだけでも難しいです。ですから、十分に慣れていなければ歯が立ちません。私も、初めて過去問をやったときは、何を書いてよいか分からず、白紙に近い状態でした。

 では、何年分くらいやれば、「十分に慣れる」ことができるのでしょうか。私は延べ15年分は解くことをお勧めします。過去5年分を3回繰り返すと、15年分です。各年度で4事例ずつありますから、全部で60事例になります。これだけやり込めば、他のことはやらなくても、かなりの可能性で合格できると思います。

 15年分は無理だとしても、最低、過去5年分+最近3年分は3回ずつを目標にしてください。1次試験と2次試験の間に、2ヶ月以上ありますから、これ位は出来ないはずがありません。

 過去問をたくさん解くことは、それだけ文章を読む訓練にもなりますので、「読解力」の向上にも役立ちます。新聞を読んでも読解力は身に付きますが、文章の内容、長さなどを考えると、診断士試験の対策として読むのであれば、過去問に勝る文章はありません。読むのが苦手だと思う方は、量をこなすことに、力を入れて頂きたいと思います。

 過去問にこだわる第3の理由は、模擬試験用の問題などは、実際の試験問題と違うからです。私は市販されている問題集も使用しましたし、模擬試験も2回受けました。しかし、過去問と比較すると、どうしても問題の質の違いを感じてしまいます。

 本番の試験は、優秀な試験委員が時間をかけて作成しますので、非常に良問だと思います。これと同じレベルの問題を作成するのは、経験豊富な予備校といえども、なかなか難しいでしょう。

 また、模擬試験や問題集の場合、解答も発表しなければならないからだと思いますが、解答が導き出しやすい問題になりがちです。過去問を見ると、何を答えたら良いか分からないような曖昧な問題も出ますが、このような問題は模擬試験などでは、あまり見かけません。そういう意味で、模擬試験なども「慣れる」という意味では役に立つのですが、問題の質まで考えると、過去問に勝るものはないと思います。